健康が気になる世代に向け、プリン体と糖質の二つをカットした“ダブルゼロ”発泡酒が好調だ。サッポロビール「極ZERO」を皮切りに、14年9月には大手3社も新商品を投入。販売が加速した結果、同年7~9月は12年ぶりに発泡酒市場が回復。その立役者となった首位2ブランドのプロモーションや、ヒットの背景を振り返る。

2014年、発泡酒のヒット商品として“ダブルゼロ”が注目を集めた。健康意識の高まりを背景に、痛風の原因とされる「プリン体」と、「糖質」の両方をカットし、機能性を前面に押し出した商品だ。
主要4社が販売する“ダブルゼロ”発泡酒がけん引し、14年1~9月の発泡酒市場は、12年ぶりに前年同期比プラスとなった。「第三のビール」発売前の02年以来のことだ。特に7~9月は、最盛期7~8月の天候不順でビールと第三のビールが落ち込むなか、発泡酒のみ2ケタ増の前年同期比113.9%と伸ばした。
“ダブルゼロ”の火付け役は、サッポロビールの「極ZERO」だ。2013年、第三のビールとして発売したが、国税当局から製法について照会を受け、14年6月に一旦終売した。“2つのゼロ”実現は世界初で、同社渾身の一品。直後の7月15日に発泡酒として再発売してヒット。「消費者調査では、プリン体ゼロの商品なら飲みたいといった声が多く寄せられた。プリン体、糖質の“2つのゼロ”の商品には大きな可能性があると考え、発売に踏み切った」(サッポロビール ブランド戦略部の小林隆太氏)。
「極ZERO」は1~11月、第三のビールと発泡酒の累計で524万ケース※を販売した。発泡酒としての販売に伴う価格上昇にもかかわらず、「プリン体」を気にする消費者から強い支持が集まった。年間売り上げ数量目標550万ケースまであとわずかだ。このヒットにより、サッポロビールの14年12月期第3四半期時点は、発泡酒と第三のビールの販売合計量が8%伸長。国内酒類売上の中でも、「発泡酒」が13年比57.8%増の売上高87億円と伸びた。
キリンビール、アサヒビール、サントリーも9月2日、新商品で参入。大手4社が出揃い、店頭での“ダブルゼロ”の存在感が一気に高まった。
キリンビールが発売したのは「淡麗プラチナダブル」。「麒麟淡麗<生>」発売の1998年以降、「淡麗ブランド」で覇を唱えてきた同社は、健康に配慮したいわゆる“機能系”でも「グリーンラベル」「アルファ」「ダブル」と淡麗シリーズで独自のポジションを築いてきた。当然“ダブルゼロ”も、この淡麗シリーズで打って出た。
「淡麗プラチナダブル」は11月までの3カ月で約203万ケースを販売。当初の販売目標数量は120万ケースだったが、発売1カ月で到達したため、目標数量を240万ケースへ上方修正。これも12月中旬時点で達成見込みとなり、さらに260万ケースまで目標を引き上げている。
アサヒビールは「アサヒ スーパーゼロ」が好調で、当初目標40万ケースに9月単月で到達。目標を3倍の120万ケースとし、15年は350万ケースを目指す。これまでは価格面で手が伸びやすい第三のビールに押されてきた発泡酒だが、健康志向の風を受け、火がついた格好だ。
※1ケースは大びん20本換算
先鞭をつけたキリン
PR攻勢のサッポロ
消費者の健康意識の高まりはここ数年続くロングトレンドだが、アルコール飲料で特にやり玉にあがる「プリン体」。そもそも、プリン体とは一体何か。
痛風などの研究助成を行う痛風財団によると、実はプリン体は、生きる上で必要で、もともと体内に存在する。いわゆる「うま味」成分でもあり、特にレバー(100グラム中210~320ミリグラム)や、白子(同300ミリグラム)、一部の魚介類、エビ、イワシ、カツオ(同210~270ミリグラム)などに多く含まれる。
このプリン体は体内で尿酸となる。酒を毎日飲む人は、痛風にかかる危険度が …