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デザイン経営時代 進化するインハウスクリエイター

社内外にデザインの価値を発信する拠点

富士フイルムのインハウス組織「デザインセンター」では、昨年5月に新たなスタジオ「CLAY」を開設した。社内外にデザインやデザイナーの価値を発信する拠点として、この1年でさまざまな変化が生まれたという。

堀切和久(ほりきり・かずひさ)
富士フイルム デザインセンター長。多摩美術大学卒業後、富士フイルム入社。同社コンシューマー分野のプロダクトデザインを数多く手がけ、国内外のデザイン賞を多数受賞。代表作は初代チェキのデザイン。2014年デザインセンター長就任後、2017年5月に「新しい富士フイルムをデザインする」を掲げ、CLAYデザインスタジオを西麻布に開設。デザインをこよなく愛する、今も自ら手を動かすセンター長。

デザイナーだけのスタジオをオープン

昨年5月に富士フイルムデザインセンターの新しいスタジオとして西麻布にオープンした「CLAY」。以前のデザインセンターは今の場所と程近い本社ビル内に拠点を構えていたが、センター長を務める堀切和久さんが「新しく富士フイルムをデザインしたい。そのためにデザインセンター単独のホームグラウンドとなる場所がほしい」と経営陣に直談判し、生まれた場所だという。

「デザイナーの多機能化が進むなか、デザイナーも製品のフィニッシュだけを担うのではなく、事業の上流から入り込み、デザインを重要な競争資源としてコミットメントする必要性を感じていました。また、各分野のデザインの中期計画(方向性)を決めるデザイン戦略会議など、特にデザインに関する重要な議論や判断は、アウェイである事業部の会議室ではなく、自分たちのホームとなるクリエイティブな場でやりたいと思っていました。さらに、商品企画者や技術者、研究者をこの場に迎え、共に考える新たなクリエイションの拠点としても、機能させたいと考えてのことでした」。

建物は、以前文具メーカーが自社と外部クリエイターの共創の拠点としていた場所だ。ガラスとコンクリートで囲われた吹き抜けや、窓の多い開放感のある空間は、海外のデザインスタジオを思わせる。また本社との"スープの冷めない距離"も決め手となって、ここにスタジオを構えることにした。「CLAY」という名前は、デザイナーがものを形づくる時に使う"粘土"の意味と、デザイナーにとって大切な"資質、天性"の意味がある。

「事業部や研究所から人を呼ぶために本社に近いこと、かつ独立分離したデザイン棟であることが重要でした。デザイナーそれぞれの資質や天性を生かすためには、場の持つ空気が重要です。息苦しい会議室で眉間に皺を寄せて考えても、いいデザインは浮かびません。クリエイティブなことを語り、決定するならそれに相応しい場所がある。シンプルに言うと、デザイナーが楽しくデザインできる場所を作りたかったということです」。

CLAYにおけるデザインセンターの活動は次の4つの領域に分けられる。1つ目が事業部と行う製品やサービスのデザイン。2つ目が研究所とのデザイン。3つ目が他社デザインセンターや大学など外部機関とのプロジェクト。4つ目がアーティストを呼んでのコラボレーションなどで、幅広い表現者との交流が目的だ。

「富士フイルムには15の事業部と16の研究所があります。関連部門と情報交換をして、技術を製品化する前に"こんな出口があるのでは"とデザインで可視化するのも私たちの役割です。昨年は武蔵野美術大学、多摩美術大学の学生と数カ月間産学協同プロジェクトを行いました。また、アーティストとの交流では、落語家の入船亭扇辰さんをお呼びして、ここで高座をお願いしました。"数少ない表現で相手に伝える力"など、デザインにも共通するスキルを学びました」。

デザインセンターの組織は、プロダクト、グラフィック、インターフェース、ユーザーエクスペリエンス、ソリューションの5つのデザイングループに分かれる。スタッフは女性が3割で、平均年齢は全社で最も若い39歳だという …

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デザイン経営時代 進化するインハウスクリエイター

企業のインハウスクリエイターやクリエイティブ専門部署に変化が起きている。会社組織の中で位置づけが変わったり、新たなインハウス組織を立ち上げる、独立したスタジオ(オフィス)を新設するなど、同時多発的な動きが見られる。外部のクリエイターと積極的に協業し、交流会を開くなど、よりオープンな気質を持っているのも、こうした新しいインハウス組織の特徴だ。なぜ今、こうした変化が起きているのか。各社への取材を通じて、インハウスクリエイターの役割の変化と、働き方の最前線を追った。