コミュニケーションが生まれる空間 Vol.31 木村 英智氏

Creator File

  • センターラインアソシエイツ 松井るみ氏
  • トランジットジェネラルオフィス 岡田光氏
  • BOOK APART運営者 三田修平氏
  • 極地建築家 村上祐資氏
  • ツクルバ 中村真広氏/村上浩輝氏
  • 木村 英智氏
  • 豊嶋 秀樹氏
  • 木村 英智氏
  • SOLSO代表 齊藤 太一氏
  • 構造エンジニア 金田 充弘氏
  • スペースコンポーザー 谷川 じゅんじ氏
  • トラフ建築設計事務所
バックナンバー
  • 中目黒マドレーヌ店主 田中 真治氏
  • フラワーアーティスト CHAJIN氏
  • AuthaGraph代表 鳴川 肇氏
  • 昼寝城 店主 寒川 一氏
  • ランドスケーププロダクツ代表 中原 慎一郎氏
  • スタンダードトレード代表 渡邊 謙一郎氏
  • ブック・コーディネイター 内沼 晋太郎氏
  • 建築家 谷尻 誠氏
  • 茶人 木村 宗慎氏
  • 建築照明デザイナー 矢野 大輔氏
  • 音響演出家 高橋 琢哉氏
  • 一級建築士 中村 拓志氏
  • 建築家 加藤 匡毅氏
  • デザインチーム KEIKO+MANABU
  • 建築設計プロデューサー 小野 啓司氏
  • インテリア・エクステリアデザイナー 佐野 岳士氏
  • 建築家 木下 昌大氏
  • 建築家 猪熊 純氏
  • 大学教授 手塚 貴晴氏
  • 建築家 二俣 公一氏
  • 建築家 梅村 典孝氏
  • 建築家 長岡 勉氏
  • 建築家 平田 晃久氏
  • 建築家 迫 慶一郎氏
週末建築活動 いえつく氏 木村英智

アートアクアリウムプロデューサー。1972年東京に生まれる。 「アート」「デザイン」「インテリア」と自身がライフワークとして追及している「アクアリウム」を融合させるアクアリストの第一人者。

Presented by YKKap

観賞魚とアートを組み合わせる

 約5千匹の金魚を、和をモチーフにしたさまざまな水槽の中で展示する「ダイナースクラブ アートアクアリウム」を今夏、東京・日本橋にて開催しました。2007年から09年・11年には六本木ヒルズでスカイアクアリウムを開催しており、日本橋では11年からの開催で、今年で3回目を迎えます。ただ実は、私はアートやデザインについて勉強をしたことはないんです。

 もともと19歳でいわゆる観賞魚の業界に入り、26歳で独立しました。そこでお客さんに魚を売る小売から、小売店へ卸す問屋、さらに原産地から魚を集めて問屋へ送るシッパーと呼ばれる仕事や、珍しい魚を集めてシッパーへ渡す仕事を、すべて経営者として経験してきたんです。業界の最前線でさまざまな魚を扱ってきたのですが、30歳を前にした頃でしょうか、その仕事をずっと続けていくことに疑問を持ったんです。ひとつには、世界中のあらゆる美しい魚が探し尽くされてしまい、やりがいが減少してしまったこと。

 もうひとつは、すでに存在している美しい魚を探し出し、人々に見てもらうという行為に限界を感じたことです。つまり新たに何かを生み出す行為ではないので、いかに自分の仕事を突き詰めるかという部分で行き詰ったのです。

 そんなとき、私はもともと個人の趣味としてアートやデザインに関わるものが好きだったのですが、これまでビジネスとしてやってきた観賞魚の世界と、アートやビジネスの世界を融合させたら、新しい世界観をつくり上げることができると考えたのです。

都心にある非日常の世界

 日本橋で開催しているアートアクアリウムのテーマは「江戸・金魚の涼」です。日本橋にはかつて花街が存在していたこと、そして江戸時代から金魚は人々に親しまれるようになったことから、金魚を用いて、ここ日本橋に現代における江戸の花町をテーマに、空間をつくり出しました。

 空間を構成する際に意識しているのは、ひとつには「都会の中にある非日常」作ることです。私はアートアクアリウムを、都心でしか開催しないと決めています。というのも、混沌としたビジネス街から、一歩踏み入れると非日常の空間に足を踏み入れるという、一瞬で世界が変わる体験を大切にしているからです。かつて日本橋の花町へ通った人々がそうであったように、仕事帰りにふらりと立ち寄り、非日常の空間にしばし身を置き、また日常へ戻る。「日常の中にある、非日常の空間」であるべきなんです。

 もうひとつあるのは、私はここに、アート作品をつくる気は全くなく、そうではなくて新しい文化が生まれる空間にしたいと考えています。夜になるとお酒を飲むことができますし、週末にはライブやDJによるパフォーマンスも行われます。展示されているものをただ鑑賞するのではなくて、お酒や音楽を介して、人々がコミュニケーションをとれる空間にしたいと考えているからです。新しい文化は、さまざまな分野の人たちが交流することで生まれるもの。

 例えば作品のひとつに、京友禅の着物を水槽に埋め込み、その上に生きた金魚とプロジェクションマッピングで着物の柄を表現した「キモノリウム」というものがあります。これまであらゆる着物に地上から見た池の世界は描かれて来ましたが、水中の世界が描かれたことはありませんでした。伝統的な京友禅の世界と最新のプロジェクションマッピングの技術が合わさることで、伝統文化の新たな一面をみることができた。このように、日本の伝統を基調にしつつも、現代的なものも混ざり合った新しい文化を生み出したいのです。

「ブレーン」2013年11月号より

「ブレーン」のサイトはこちらから

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日本橋 ダイナースクラブにて開催された「アートアクアリウム2013 ~江戸・金魚の涼~」の会場風景

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大奥 OOOKU

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キモノリウム KIMONORIUM

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ギヤマンリウム

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カレイドリウム

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