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三井化学×ブレーン CREATIVE RELAY

汎用性のある新しい素材でつくる これまでにないプロダクト

僕たちYOYは自分たちのアイデアから生まれたプロダクトが世の中
に広くいきわたり、手にしてもらうことを目指しています。それゆえにプロダクトには汎用性のある素材を使うようにしています。そこで、今回僕らが選んだ素材は光で劣化しない弾力性のあるウレタン樹脂『STABiO』です。黄変しない特長から、透明や白い状態で表面に使用することができます。
 一般に樹脂は堅いものと認識されていますが、この柔らかさや弾力性を生かし、柔らかい家具をつくろうと考えました。ほぼ同時に、中が空洞のクッションのイメージが浮かびました。レース編みのクッションのように見えるけれど、あれ、中には何もない...でも、クッションとしての弾力性を持っている。思いついたものの、どういう構造にすれば成立するものなのか、当初はさっぱりわかりませんでした。唯一わかっていたのは、素材と構造とデザインが一体化したものでなければ成り立たたないだろうということでした。
 モックアップを試作し、三井化学さんに構造計算をしてもらい、手編みのレースをモチーフとした構造体をつくりました。そこからは樹脂の硬度、厚み、構造、さらには表面のデザインの調整の繰り返しでした。テクスチャーを生かしたかったのでレースの糸を表現すべく、自分たちで細かくモデリングし、試作用の型をつくりました。最終的に型抜きしたものをつなぎあわせ、ようやく空っぽのクッションができあがりました。
 素材についての知識は、経験でしか得られません。特に今回は素材について知見の深い三井化学さんと一緒に制作したことで、僕らだけでは解決できない課題も乗り越えることができたし、新たな知見を得ることもできました。今後は現状の課題を洗い出し、将来的には量産化できるようブラッシュアップを図りたいと考えています。

  • 制作過程のモックアップ。
  • YOY作品「CANVAS」
  • YOY作品「LIGHT」
  • YOY作品「PEEL」

今回使った素材について

LACEクッションを実現できる材料としてポリウレタンを選定しましたが、技術的には非常に高いハードルがありました。
材料に求められる性能は以下3つです。
白を際立たせる透明感、クッションが無くても形状が安定する硬さ、そして、手で押し込んだ際のクッション感(柔らかさと反発感)。

それぞれはポリウレタンの得意とする性能ではありますが、3つを共存させるのはこれまでの材料では困難でした。
材料を硬くするとクッション感が損なわれます。柔らかくすると形状を保持できず潰れます。またLACEを表現するため非常に薄く、さらに空間があるデザインであるため強度の分布が不均一になります。

今回、ポリウレタン材料「STABiO(スタビオ)」が持つ特性を利用し、硬さと柔らかさという相反する性質を共存させる構造を設計することでプロダクツが完成しました。これは、LACEクッションというアイデアが、素材の魅力を最大限に引き出してくれた結果でもあります。

ポリウレタン材料「STABiO(スタビオ)」は、三井化学が世界で初めて開発した従来のポリウレタン材料にはない多くの特性を有しています。塗料や接着剤、フォーム、メガネレンズ、柔らかいゲルなどの用途に展開しており、硬いものから柔らかいものまで幅広い機能や触感を提供できます。
塗料として使用すると、ちょっとした表面のキズなら、復元させてしまいますし、耐薬品性が向上しているので、強い薬品が付くと劣化してしまう従来のウレタン塗料の課題をクリアできます。
ソファーのクッションに代表されるフォーム材料として使用すると、従来のウレタンと異なり黄色く変色しませんし、より柔らかい触感です。
他に、ゲルにすると、シリコーンとはまた違う独特の柔らかさ、反発感を持っていることで、新しい質感を求める用途での開発が進んでいます。
そして、植物由来の材料であること、反応性が高いため、様々な業界における塗装・接着工程の短縮化・生産性向上によるCO2排出削減など環境にやさしい特徴も見逃せません。

三井化学が長年にわたりつちかってきた、有機合成技術で実現した「STABiO(スタビオ)」が作り出す未来にご期待ください。

COMMENT

三井化学
研究開発本部
合成化学品研究所
特殊ポリウレタン
材料開発グループ

今般、YOYのお2人から、スタビオの独特な質感と、転写性の良さに着目頂き、「クッションの無いクッション」という考えもしなかったアイデアが出てきたときは、正直、目がテンになりました(笑)。
しかしながら、スタビオの柔軟性を調整できる点や転写性の良さを活かして、一本一本の糸まで表現するというYOYさんらしい、とことん拘る姿勢から生まれる新しい質感表現、見て触って分かる体験価値として、プロダクトが仕上がったと思います。
スタビオというまだ生まれたばかりの新製品ですが、さまざまな特徴を持っています。今回のプロジェクトで、またひとつスタビオに新しい魅力が加わったと思います。多くの方にスタビオに触れて頂き、新しい素材の魅力が伝われば、嬉しい限りです。YOYさんはじめ、製作協力頂きました(株)三興さん、美しい写真で締めて頂いた古川さん、ありがとうございました。

YOY / デザインスタジオ
YOY(ヨイ)は、空間デザイナーの小野直紀とプロダクトデザイナーの山本侑樹により2011年に設立されたデザインスタジオ。空間と物の間にあるデザインをテーマに作品を制作。その作品は、MoMAをはじめ世界中で販売され、国内外で多数のアワードを受賞している。2015年より武蔵野美術大学非常勤講師。2016年4月に、ミラノで個展を開催。
YOY
  • デザイン:小野直紀、山本侑樹
  • 撮影:古川泰子