フォント・字詰め・文字組み・レイアウト...
センスに依らない、文字の技術とテクニックを学ぶ。
ハードウェアとソフトウェア両面における、デジタル機器の進化によって、だれでも容易に、簡単なデザインを組むことができるようになりました。しかしその一方で、デザインの観点から体系立って構築された文字に対する意識も希薄になってきています。文字は全体の意思、トーン&マナーを決定するうえで重要な役割を担います。デザインの本質を理解した、深みのある提案ができないのであればグラフィックデザイナーの存在価値はなくなってしまいます。裏を返せば、文字だけで世界が成立する、タイポグラフィを駆使したデザインがあるように、文字を味方に付けることができれば、デザインをする人間にとって、これほど心強いことはありません。とはいえ、校了間際まで、コピーの変更や文字修正がある中で、なかなか現場で時間をかけて考えていられない部分であることも事実です。
デザインに関わる方が、身に付けておくべき本質
色、写真等がもたらすデザインの雰囲気は、見るだけでもある程度吸収することができ、マネして作りやすいといわれています。一方で文字はバランスが掴みにくかったり、ミリ単位の誤差で違和感につながったりするため、一朝一夕に技術を身に付けることはできません。文字をデザインで成立させることは、本来非常に大変なことです。文字を必要以上に崩してしまったり、意味を深く考えずに配置をしてしまうと、写真等の他の素材がどんなによくても、そのデザインは台無しです。そこで宣伝会議では、文字自体が持つイメージと、アートディレクション全体における文字の役割の両方を学ぶことで、デザインのクオリティ向上を図る「タイポグラフィ実践講座」を開講します。
文字が持つ役割と、文字組みの基本
文字がもつ役割と表現を理解するには、人に例えることが効果的です。例えば「書体」は声色に例えられ、「サイズ」は声量、「組み方」は話し方に例えられます。同じ人物でも、ときどきのシチュエーションによって、ボリュームや喋るスピードを変えることがあるように、文字によって受ける印象はさまざまです。右図のように同じ言葉だとしても、声量が大きい人や小さい人、若々しい声や熟年の味わい深い声と、文字毎に異なる特徴が表れます。シンプルに短い主張をしたいのか、長時間にわたって話を聞いてもらいたいのか。これから組む文字の目的や内容に沿って、的確な表現を使い分けるためには、「文字」が人に与えるイメージや印象を理解する必要があります。
目的別ロゴの作り方
ロゴや、見出しをデザインする際に多いのが、「もっと目立たせたい」「もっとロゴっぽくしたい」など、「既存になにか変化をつけたい」と漠然と思うことです。しかし、感覚的に文字に変化を付けるだけではテーマにはまらず、メッセージは上手く伝わりません。ロゴや見出しのように、見せる文字をつくるには、おおきなカタマリで捉え、徐々にそのブロックを、目的に沿った文字のかたちに整えていくことが必要です。本講座では、レイアウトに最適化し定着化させるためのブロックの組み方、文字の調整の仕方について学びます。
文字要素のみでイメージをコントロールする
ロゴや見出し、タイトルのデザインに取り組む際に、「既存書体をただ使用するのではなく、変化をつけなくてはならないのではないか」「フォント打ちっぱなしではダメなのではないか」と多くの人が考えがちです。しかし、文字のビジュアルは変化をつけると見る側の好き嫌いになってしまい、よほどテーマに合致したデザインでない限り、好きと思わせるのは大変な作業です。結果、適当に崩しているのではという評価にもつながってしまいがちです。まずは、既存書体で線や塗りなど、さまざまな処理を想定したうえで適した書体を選択する眼を養います。
情報量が多いときのデザインテクニック
要素を正確に把握して、見た目に揃っているデザインは、とても美しく機能的で正しいデザインだといえます。しかしデザインは正しいだけでは無個性になったり、匿名的になりすぎてしまい、魅力の弱いものにもなってしまいます。うまい「崩し」を知っているクリエイターは、崩すことで今まで見慣れていたデザインに新たな価値を生み出します。しかし最初から崩すのではなく、一度揃えてから、魅力的に見せたい部分を崩すことが必要です。本講座では正しく揃えたうえでどのように崩すと魅力的な画面構成にできるのか、事例を基に学びます。
文字の配置で美しく見せる「仕組み」をつくる
ポスターでも、新聞広告でも、書籍でも、一度にすべての要素を一目で捉えることはできないので、見る側には必ず視線の動きがあります。まず、目に飛び込ませたい要素、あとから読んで欲しい要素など、見る人の時間軸も含めデザインすることが必要です。なぜ、この文字を、その場所に配置しているのか。レイアウトにおける効果的な導線を考慮しながら、文字の配置テクニックを学びます。
回数 | 講義内容 |
第1回 | デザイナーとして知るべき文字の基礎知識〜書体・組版・ロゴ(1) ・書体とは ・書体の歴史 ・書体の分類と機能 ・読ませる文字と見せる文字 ・組版の基礎(横組み) |
第2回 | デザイナーとして知るべき文字の基礎知識〜書体・組版・ロゴ(2) ・組版の基礎(縦組み) ・タイポグラフィと造形性 ・ロゴの本質 ・ロゴ講評・アドバイス |
第3回 | 処理によって文字の印象をコントロールする(1) ・文字を太らせる/細くする ・角を丸くする/トリミングする ・文字の比重を変える ・一部をパーツにする ・基本図形から削りだす |
第4回 | 処理によって文字の印象をコントロールする(2) ・文字にパターンやテクスチャをつける ・オリジナルのウロコを追加する ・手書きの文字を利用する ・ビジュアルを文字化させる |
第5回 | 文字情報を"正しく・楽しく・美しく"見せるデザインとレイアウト(1) ・情報書き書き出す ・優先順位をつける ・改行位置の決め方 ・情報をグループに分ける ・情報を配置する ・情報を装飾する ・色を使い分ける |
第6回 | 文字情報を"正しく・楽しく・美しく"見せるデザインとレイアウト(2) ・盤面率と余白 ・仮想のグリッドライン ・グリッド拘束率 ・造形ジャンプ率 ・図版率 ・画面を分割する ・視線の検証 |
第7回 | より良いコミュニケーションをするためのアートディレクション(1) ・コミュニケーションとしてのタイポグラフィ ・マーケティング課題を整理する ・ビジュアルとコピーの役割を考える |
第8回 | より良いコミュニケーションをするためのアートディレクション(2) ・課題演習/プレゼンテーション ・全体のバランス、情報の優先度を確認して調整する ・細部を突き詰めて世界観を高める |
カイシトモヤ氏
株式会社ルームコンポジット 代表取締役/アートディレクター
下北沢のデザインオフィス、株式会社ルームコンポジット代表取締役/アートディレクター。東京造形大学グラフィックデザイン専攻領域
教授。グラフィックデザインを軸に、クライアントと並走できるデザインプロセスやコミュニケーションの新しい形を模索中。主な著書に「たのしごとデザイン論 完全版」「How to Design いちばん面白いデザインの教科書
改訂版」等。香港国際ポスタートリエンナーレ金銀銅賞など。
柿木原 政広氏
株式会社 10inc代表 アートディレクター グラフィックデザイナー
1970年広島県生まれ。ドラフトを経て2007年に株式会社10(テン)を設立。JAGDA会員。東京ADC会員。主な作品にsingingAEON、R.O.U、藤高タオルのブランディング、角川武蔵野ミュージアム、NEWoMan横浜、信毎メディアガーデンのCI、東京国際映画祭、
静岡市美術館、などを手がける。カードゲーム「Rocca」をミラノサローネに2012年から出展。著作に福音館の絵本「ぽんちんぱん」「ひともじえほん」など。
2003年日本グラフィックデザイナーズ協会新人賞受賞。NewYorkADC賞、ONESHOW PENCIL賞、東京ADC賞、GOOD DESIGN賞受賞。
古平 正義氏
FLAME アートディレクター グラフィックデザイナー
1970年大阪生まれ。アキタ・デザイン・カンを経て、97年よりフリーランス、2001年FLAME設立。
主な仕事に「ラフォーレ原宿」広告・CM、スキンケア「oltana」ブランディング、「Fender」「アートフェア東京」「Mercedes-Benz Art
Scope」他のアートディレクション、Char・佐野元春・INORAN・GLAY・一青窈・AKB48等のCD/DVDジャケット・ミュージックビデオ、BAO BAO ISSEY MIYAKEとのコラボレーションなど。
ONE SHOW Gold/Silver、D&AD Yellow Pencil、東京ADC賞など受賞。
澁谷 克彦氏
グラフィックデザイナー
81年東京藝術大学デザイン科卒業。資生堂宣伝部を経て現在フリー。「クレ・ド・ポー
ボーテ」「SHISEIDO」「INOUI」といったグローバルブランドのグラフィック、CI、広告+パッケージ+スペースなど、すべてのコミュニケーションを一貫させたブランドデザインを手がける。2011〜2017年、資生堂の企業文化誌『花椿』のアートディレクション。女子美術大学教授。亀倉雄策賞、ADC会員賞、ADC賞、TDC金賞、JAGDA新人賞、NYADC特別賞など受賞。
【ライブ講座】 第15期 1月開講
開講日 |
2024年01月19日(金)
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講義時間 | 19:00~21:00 |
定 員 | 30名 |
開催場所 | Zoomにて開催予定 【受講のご案内と注意事項】 受講にあたっての全ての連絡事項は、原則、開講前にお送りするinfo-educ@sendenkaigi.comに掲載する、受講生専用ポータルサイトでご案内します。開講前、ならびに毎週の講義前に、もれなくポータルサイトをご確認ください。 ※ドメイン設定(受信拒否設定)をされている方は、info-educ@sendenkaigi.comからのメールを受信できるよう、ドメイン設定を解除して頂いただくか、弊社のご案内ドメインsendenkaigi.comを受信リストに加えていただきますよう、お願いします。 |
受講価格 |
90,900円(税込 99,990円) ※申込金10,000円(税込 11,000円)を含みます |
補 足 | ●初回講義につきましては開講1週間前を目途に、別途事務局からメールでご案内いたします。直前にお申込みの場合は翌営業日を目途にご案内いたします。 ●本講座は欠席時のアーカイブ配信(補講)はございません。ライブ配信のみとなりますので、予めスケジュールの調整をお願いいたします。 |
注意事項 |
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