コミュニケーションが生まれる空間 スペースコンポーザー 谷川じゅんじ氏

Creator File

  • センターラインアソシエイツ 松井るみ氏
  • トランジットジェネラルオフィス 岡田光氏
  • BOOK APART運営者 三田修平氏
  • 極地建築家 村上祐資氏
  • ツクルバ 中村真広氏/村上浩輝氏
  • 木村 英智氏
  • 豊嶋 秀樹氏
  • 木村 英智氏
  • SOLSO代表 齊藤 太一氏
  • 構造エンジニア 金田 充弘氏
  • スペースコンポーザー 谷川 じゅんじ氏
  • トラフ建築設計事務所
バックナンバー
  • 中目黒マドレーヌ店主 田中 真治氏
  • フラワーアーティスト CHAJIN氏
  • AuthaGraph代表 鳴川 肇氏
  • 昼寝城 店主 寒川 一氏
  • ランドスケーププロダクツ代表 中原 慎一郎氏
  • スタンダードトレード代表 渡邊 謙一郎氏
  • ブック・コーディネイター 内沼 晋太郎氏
  • 建築家 谷尻 誠氏
  • 茶人 木村 宗慎氏
  • 建築照明デザイナー 矢野 大輔氏
  • 音響演出家 高橋 琢哉氏
  • 一級建築士 中村 拓志氏
  • 建築家 加藤 匡毅氏
  • デザインチーム KEIKO+MANABU
  • 建築設計プロデューサー 小野 啓司氏
  • インテリア・エクステリアデザイナー 佐野 岳士氏
  • 建築家 木下 昌大氏
  • 建築家 猪熊 純氏
  • 大学教授 手塚 貴晴氏
  • 建築家 二俣 公一氏
  • 建築家 梅村 典孝氏
  • 建築家 長岡 勉氏
  • 建築家 平田 晃久氏
  • 建築家 迫 慶一郎氏
スペースコンポーザー 谷川じゅんじ氏 谷川じゅんじ氏

(たにがわ・じゅんじ)

スペースコンポーザー。JTQ代表。1965 年生まれ。02年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマにイベント、エキシビジョン、インスタレーション、商空間開発など目的にあわせたコミュニケーションコンテクストを構築、デザインと機能の二面からクリエイティブ・ディレクションを行う。主な仕事に、KRUG bottle cooler、平城遷都1300年祭記念薬師寺ひかり絵巻、パリルーブル宮装飾美術館 Kansei展、グッドデザインエキスポ、JAPAN BRAND EXHIBITION、文化庁メディア芸術祭などがある。DDA 大賞受賞、優秀賞受賞、奨励賞受賞、他入賞多数。

Presented by YKKap

空間ではなく気持ちのデザイン

 空間におけるデザインや、そこでデザインを施したり、その場にある音や光といったさまざまな要素をチューニングすることは、僕にとって場が持つポテンシャルを最大限発揮できるように環境を調整していく作業です。そして、その場で生まれる出来事やコミュニケーションをニュースにしていくことで、新たなファン層を取り込んだり、ブランドを支持してもらう。ポイントは、空間というのはあくまで副次的なもので、ブランディングを軸に、空間をメディアとして利用してメッセージを伝達することです。その形やデザインといった、ハードウェアは目的ではありません。大切なのは人の気持ちを変化させ、記憶に残ることなんです。

 今年の3月、東急東横線の跡地に期間限定で設置されたユニクロのUTストア「UT POP-UP! TYO」では1万2千枚のTシャツが展示・販売されているのですが、ここはUTを買いに行く場というより、そこでの体験を楽しむために行く場だと考えて空間を設計しました。体験こそが最大の価値であり、その体験の記念として、そこでの記憶を呼び起こすためのトリガーとして、人はTシャツを買って帰るわけです。

 それから4月には表参道で開催されたマーク・ジェイコブス展の空間構成も行いました。ファッションブランド「マーク・ジェイコブス」の過去のランウェイショーに登場した作品を展示しているのですが、ここでは、作品展のキービジュアルと同じように、来場者が巨大なマーク・ジェイコブスのショッピングバッグに入り、記念撮影できるフォトブースを設置しました。その写真はFacebookのファンページにアップされる仕組みとなっていて、やはりイベントでの体験という最大の価値があり、そこでの写真がトリガーとしての役割を持っています。こうして人の記憶に残ることで、リピーターになったり、周囲の人へとレコメンドされて新たな関係を生んだりする。大切なのは、次のアクションへとつながる、ブランドとの関係をしっかりと築き上げることです。

ブランドの価値体験をデザインする

 ときどき、ブランドとメーカーの違いは何かと聞かれることがあります。そこでいつも説明するのは、ブランドというのは「もの」じゃなくて「こと」だということ。メーカーというのは「もの」を売ってビジネスしていますが、ブランドというのは「哲学」を売っているんです。だから例えば、メーカーと消費者の関係は、もし買ったものがよくなかったら、すぐに切れてしまう。もしくは、同じ目的を達するものが少しでも安い価格で売っていれば、すぐそっちへ人が流れてしまいます。でもブランドは、たとえ少々ものがぶれたとしても、それによってファンからお叱りを受けたとしても、その関係は続いていきます。そこには個と個の信頼関係が成立しているからです。最終的にこのブランドとしての価値を伝えることが、僕らの目指していることです。

 UT POP-UP! TYOも、ユニクロの持つイメージや、これからの可能性を皆に感じてもらうための仕掛けなんです。Tシャツを売りたいとか、認知度を上げたいということではない。最終的にはユニクロというブランドの、「ライフウェア」というポジションの確立を目指しています。ファッションとは、皆の毎日を少しでも楽しいもの、ハッピーなものに変えていけるもの。そのプレゼンテーションとして、僕らは価値体験をデザインしているわけです。

「ブレーン」2013年6月号より

「ブレーン」のサイトはこちらから

イメージ画像

「UT POP-UP! TYO」

イメージ画像

「MARC JACOBS ICONIC SHOWPIECES EXHIBITION」

当サイトについて