コミュニケーションが生まれる空間 Vol.36 松井るみ(センターラインアソシエイツ)氏

Creator File

  • センターラインアソシエイツ 松井るみ氏
  • トランジットジェネラルオフィス 岡田光氏
  • BOOK APART運営者 三田修平氏
  • 極地建築家 村上祐資氏
  • ツクルバ 中村真広氏/村上浩輝氏
  • 木村 英智氏
  • 豊嶋 秀樹氏
  • 木村 英智氏
  • SOLSO代表 齊藤 太一氏
  • 構造エンジニア 金田 充弘氏
  • スペースコンポーザー 谷川 じゅんじ氏
  • トラフ建築設計事務所
バックナンバー
  • 中目黒マドレーヌ店主 田中 真治氏
  • フラワーアーティスト CHAJIN氏
  • AuthaGraph代表 鳴川 肇氏
  • 昼寝城 店主 寒川 一氏
  • ランドスケーププロダクツ代表 中原 慎一郎氏
  • スタンダードトレード代表 渡邊 謙一郎氏
  • ブック・コーディネイター 内沼 晋太郎氏
  • 建築家 谷尻 誠氏
  • 茶人 木村 宗慎氏
  • 建築照明デザイナー 矢野 大輔氏
  • 音響演出家 高橋 琢哉氏
  • 一級建築士 中村 拓志氏
  • 建築家 加藤 匡毅氏
  • デザインチーム KEIKO+MANABU
  • 建築設計プロデューサー 小野 啓司氏
  • インテリア・エクステリアデザイナー 佐野 岳士氏
  • 建築家 木下 昌大氏
  • 建築家 猪熊 純氏
  • 大学教授 手塚 貴晴氏
  • 建築家 二俣 公一氏
  • 建築家 梅村 典孝氏
  • 建築家 長岡 勉氏
  • 建築家 平田 晃久氏
  • 建築家 迫 慶一郎氏
岡田光氏 松井るみ

(まつい・るみ)

1961年大阪府生まれ。舞台美術デザイナーとして2005年にブロードウェーミュージカル「太平洋序曲」(宮本亜門演出)でトニー賞にノミネート。07年には劇場に関する国際機関OISTATから「世界の最も名誉ある舞台デザイナー12人」に選出される。読売演劇大賞や紀伊國屋演劇賞、菊田一夫演劇賞ほか受賞多数。

Presented by YKKap

非日常へ移行させる空間

 演劇の舞台空間というのは建築空間などと違って、嘘をつく空間ですよね。正面から見ると本物のようですが、裏から見るとハリボテだったりする。それでいて、お客さんを現実の世界から夢の世界へと移行させてあげないといけない。いかにいい嘘をつくかが大切なんです。例えばお客さんが劇場に入って来てまず目にするのが舞台のセットです。席に座って、幕が開くまでの何分間かはセットを見ながらこれから始まる舞台の世界を想像しますから、そこで夢の世界へと連れていくことができるかが、勝負なんですね。

 昨年手がけた「ロックオペラ モーツァルト」の舞台では、巨大な柱の上で物語が繰り広げられるようなセットをつくりました。打ち合わせの後で演出家がぽつりと言った「柱」という単語が耳に残っていて、それをヒントにしたのですが、ただ舞台上に柱を建てるだけじゃ面白くない。いっそ柱そのものを舞台としたらいいのではと、考えたんです。舞台美術家の仕事というのは、脚本や演出家のイメージを具現化しつつ、お客さんの想像力をかきたて、非日常へと連れていける空間に仕上げていくことなんです。

ライブ感ある柔らかい空間

 昨年夏にAKB48のコンサート会場の美術を手がけたのですが、ライブ空間をつくったのは初めての経験でした。空間のつくり方として舞台とは異なる点も多いですが、それよりどちらも「生」の空間という共通点があるなと感じました。例えば舞台であれば役者の体調によって、コンサートならその日のセットリストによって、公演期間中に一日として同じ内容が見れる日はありません。空間としては変わりやすいというか、とても柔らかい空間ですよね。今日できたことが、明日はできなかったりもする。それを、なんとか整えていくのが我々の仕事です。小物ひとつとっても役者の方の芝居心が湧くようなものを選んだり、コンサート会場でも演出に使える仕掛けを取り入れたり。幕が開いてから、公演期間中に美術を変えることもあるんです。例えば最近の舞台で、演出家の意向で初日が終わった後に、舞台上に大きな絵を描いたことがありました。初日と千秋楽に来て、その変化を楽しむというファンもいますよね。

 いまはインターネットで簡単に見た気になったり、行った気になったりできますが、まだまだ人は根源的なところで、ライブ感ある場を求めている。そんな人たちを非日常へと連れていける生の空間を、作っていきたいと思っています。

「ブレーン」2014年4月号より

「ブレーン」のサイトはこちらから

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ロックオペラ モーツァルト

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AKB48 2013真夏のドームツアー

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