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三井化学×ブレーン CREATIVE RELAY

金属と樹脂が一体化した板材が完成

今回、僕らは三井化学が持つ素材を使ったプロダクトを考える以前に、そもそも「素材」とは何だろう?「原料」と「材料」との違いとは何か?という問いからスタートしました。その答えを探る中で行き着いたのが、「素材とは、創造を掻き立てる力」であるということ。例えば木という素材。木に出会った人は、切ったり、削ったり、何かしらの加工を施すことで、さまざまなものを生み出してきました。つまりそれは木という素材から人がつくることを誘発された、その結果と言えます。三井化学が扱う素材の多くは新しいものをつくるために、すでにある素材から新たに生み出されたものばかりです。そこで、僕らは「すでにある素材に新たに手を加えることで、新しい素材をつくる」ことをコンセプトとし、見た瞬間に“これで何かをつくってみたい”と触発される素材をつくることを試みました。それを実現するために使ったのが、金属と樹脂の接着や接続を可能にし、一体化させる技術
「ポリメタック」です。三井化学新事業開発研究所接合部材グループの皆さんのご協力のもと、この技術でプラスチックとアルミを一体化した新しい素材をつくりました。
普段、木材など自然物を使ってデザインするとき、まず色や木目など素材の素性を見立てる事から始めます。樹脂を金属に射出する過程で発生する多様な表情を持ち、異なる素材特性が偏在しているこの素材は、工業的な素材ながら、そのような見立てる行為を誘発します。この特性を活かしたプロダクトの例として、型抜きした指輪と、照明器具をつくりました。指輪という小さなプロダクトの中に、金属と樹脂が一体となった姿、そしてその素材感の共鳴は新鮮な印象です。また板材のトリミングによっては、アルミ部分に通電させこの素材を基盤と考える事も出来ます。板材が照明として機能するプロダクトに変わって行く様は、素材とプロダクトの境界を曖昧にし、部品という概念を忘れさせます。
新しい素材が生まれることで、新しい可能性が生まれる。ぜひ多くのデザイナーの方に、この素材が持つさらなる可能性を見つけていただけたら、と思っています。

  • 今回の作品のモックアップ。
  • 「COMPOSITION+」〈撮影:林雅之〉
  • 「Dye It Yourself+」〈撮影:林雅之〉
  • 「FES Watch」

今回使った素材について

近年、自動車分野や電子機器分野では軽量化、製造工程の削減が求められており、マルチマテリアル化が進んでいます。
三井化学のポリメタックは、従来は不可能であった金属と樹脂の様々な組み合わせで強固な接合を可能にする金属樹脂一体化技術であり、軽量化と製造工程削減のニーズを同時に実現できる三井化学の最新ソリューションです。
これまで金属と樹脂を結合するには、接着剤を使用したり、ねじなどの締結部品を必要としていました。
しかし、最適な接着剤の選定を個別に行う必要があったり、接着強度にバラつきが大きいこと、ネジにゆるみが生じ、こまめなメンテナンスが必要になるなど、マルチマテリアルの実用化のハードルは高いものでした。

ポリメタックは、金属に特殊な処理を施し、ナノレベル~ミクロレベルの微細な孔を形成させ、その微細孔に樹脂を流し込むことによって、物理的に強固に接着・接合させるテクノロジーです。
射出成形や注型により、接着剤を使用せずとも強固な接着強度を持つ一体化部品を製造することが可能です。
また、射出成形や注型ができないような材料を接合する場合も、ポリメタック処理した金属と接着剤を用いて異種金属部品同士や金属部品と樹脂部品を接合できます。従来の接着に比べ安定した強度が得られるため、部品のぐらつきや経時変化が少なく、剛性の向上が実現できます。

COMMENT

三井化学
研究開発本部
新事業開発研究所
接合部材グループ

今般、TAKT PROJECTの皆様から、素材から新しい素材へというコンセプトの下、
ポリメタックの接合メカニズムが一目で分かり、ポリメタックだからこそ実現できるデザインの提案を頂きました。
これまで、軽量化、意匠性の向上をコンセプトに部品開発を行っていたため、「創造力を誘発する素材」というコンセプトは非常に新鮮でした。ポリメタックの素材が作り手のアイディア次第で、通電性や重心を変えるなどの新しい機能を与えられることがわかり、新しい価値が生まれたと感じる瞬間でした。
プロダクトのデザインは秀逸で、接合メカニズムを知っている私たちでさえ、なぜ金属と樹脂が接合しているのか不思議に感じる作品に仕上がりました。幅広い方々にポリメタック素材に触れて頂き、私たちの想像を超える新たな価値を一緒に見出していけたらと思っています。
TAKT PROJECT様をはじめ、製作協力頂きました㈱相模工機所様、㈱信栄社様、美しい写真を撮影頂いた林様に感謝致します。

TAKT PROJECT / 代表 吉泉聡
2013年TAKT PROJECT Inc.共同設立。DESIGN THINK+DO TANKを掲げ、「別の可能性を作る」さまざまなプロジェクトを展開している。クライアントワークに加え、実験的な作品をミラノサローネなど国内外で発表・招待出展。Red Dot Design Award、グッドデザイン賞など受賞多数。
YOY
  • コンセプト+デザイン/吉泉聡
  • デザイン/宮崎毅