JP EN

三井化学×ブレーン CREATIVE RELAY

社会課題解決に向けたパッケージ技術の応用

三井化学が持っているさまざまな先端技術のオリエンを受け、企画を考える前に行ったことは「三井化学という企業が社会に存在する意味」を調べること。つまりブランドパーパスを知る作業でした。
わかったことは3つ。(1)イノベーションによって持続可能な社会を実現する、(2)社会が抱える課題の解決を行う、(3)グローバルで必要とされる企業になるというパーパスでした。
この3つをクリエイティブアイデアやデザインを模索する上でのベンチマークとし、イシューハンティングから始めました。
チームと打ち合わせする過程で発見したのが、自然災害が起きた場所や後発開発国における難民キャンプなどでは、「清潔な水と栄養が同時に存在しない」という事実です。
これらを一つのパッケージに組み合わせ、セットとして届けることが可能になれば、こうした地域の問題解決につながるのではと考えました。
「FASTAID」は1つのパッケージの中で2つの異なる内容物を保存し、使用時にワンダッチで混ぜ合わせることができる、ロック&ピール樹脂を使ったパッケージをベースにしています。
この樹脂技術の素晴らしさは異なるものを同梱、保存ができる、これにつきます。
今回のアイデアのポイントはこの技術を応用して、1つの魅力的なプロダクトに昇華することです。
魅力的というのは見た目の美しさではありません。このプロダクトの存在意義です。その存在意義をアイデアによって与えてあげるというのが目指したところなのかもしれません。
デザインは直感的にわかるものにし、人々の気持ちを和らげられるように、明るいビタミンカラーを選んでいます。まだプロトタイプですが、近い将来、三井化学のCSR活動の一環としてプロジェクト化できるよう、関係団体と会話を始めようとしています。「サステナブル社会のためのテクノロジー」を実現すべく引き続き頑張ります。

  • FASTAIDのコンセプト
  • デザインラフ
  • パッケージの構造ラフ
  • SUNTORY「3D on the Rocks」
    (佐藤さんの仕事より)
  • QUIKSILVER「TRUE WETSUITS」
    (佐藤さんの仕事より)

今回使った素材について

三井・デュポン ポリケミカル株式会社のロック&ピール樹脂は、パッケージを製造する際のヒートシール温度を変えるだけで、完全シールとイージーピールの異なる機能を使い分けることが可能な新素材です。
ロック&ピール樹脂でできたフィルムをパッケージの最内層(シーラント)に用いて、面々シール(ロック&ピール樹脂のフィルム同士のシール)すると、120℃~160℃程度の幅広い低温領域ではイージーピール機能を発現させ、約180℃以上の高温領域では完全シール機能を発現させることができます。
そうした特徴を活かして、食品や化粧品の2室分離袋のパッケージとして採用が広がっています。

2室分離袋とは、異なる内容物を1つのパッケージに充填した包装形態です。
従来はイージーピールしたい部分に異種材料のフィルムを差し込んだり、ヒートシールを阻害する材料をコーティングする等の方法で製造されていたことから、手間とコストがかかる特殊なパッケージであると認識されていました。
しかし、ロック&ピール樹脂は、ヒートシール温度を変えるだけで、簡単に2室分離袋を製造することができ、コストダウンが実現できるほか、より自由なパッケージデザインが可能になるなど、多くのメリットがあるとご評価頂いています。

例えば化粧品では、2つの成分を使用する直前に混ぜなければならない場合があります。
最初から混ぜておくと、有効成分が変質してしまったり、鮮度が失われてしまうからです。
外出先や旅行先では、2つのパッケージを同じ量だけ持っていかなければならず、面倒でした。
しかし、ロック&ピールを用いると、1つのパッケージの中で2つの内容物を別々に保存でき、使用時はワンタッチで混ぜ合わせるだけです。
異なる内容物が混ざり合う変化も楽しめ、体験価値ある新しいパッケージとして高い評価を頂いております。

食品用途では、ホット充填やボイル殺菌工程にも使用可能であり、1つのパッケージに別々の内容物を保管できることで、「食品や調味料の風味を最大限に引き出せる」、「消費期限の向上、フードロス対応できる」として、新たな検討が進んでいます。
他にも、ワンタッチ混合の特徴はユニバーサルデザインのパッケージとして、様々な用途への応用検討も進めています。

ロック&ピール樹脂は、2室分離袋をはじめ、パッケージの一部だけを「剥がしたい」「開封したい」といった用途に最適です。
アイデア次第でこれまでにないユニークな商品が生まれる可能性があると考えており、是非一度サンプルを手に取って頂きたいと考えています。

COMMENT

三井・デュポン
ポリケミカル
株式会社

今般、佐藤カズーさんはじめTBWA\HAKUHODOの皆様には、ロック&ピール樹脂の持つ機能に着目いただき、機能を活かした消費者価値、社会的課題の解決提案にまで昇華させた、大変興味深いご提案を頂きました。
プロテインやビタミン剤等の栄養補助食品と、清潔な水の両方を必要とする地域や緊急災害時に、ロック&ピール樹脂を活用した2室分離袋のソリューションは、困難に直面している方々に対して、スピーディーかつ直接的に課題を解決する有効な手段であると考えます。 人口増加や経済格差、各種紛争による食糧問題や、異常気象等による災害に直面した世界中の方々に対し、弊社の開発した樹脂がお役にたてる機会があればこれに勝る喜びは無く、今回の企画に留まらず、実用的なプロダクトとして是非本プロジェクトを実現したいと考えております。

さとう・かずー / TBWA\HAKUHODO エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター。1973年横浜生まれ。
メディアの枠を超えたBig Ideaで、150以上の国内外の賞を受賞。またカンヌ国際広告祭をはじめ数々の国際広告賞の審査委員にも選出されている。2011年クリエイターオブザイヤー・メダリスト。
さとう・かずー
  • CD/佐藤カズー
  • C/市川直人、梅田哲矢
  • AD+D/河野吉博
  • クリエイティブテクノロジスト/松倉昌志
  • 撮影/児島孝宏(博報堂プロダクツ)
  • レタッチ/宮本准(デジモ)
  • PR/吉川房江
  • 印刷/アートファクトリー