今夜も窓に灯りがついている。

「窓の灯り」をテーマとして人気作家の方々にリレー形式でエッセイを執筆いただく連載企画

Vol.76 バンドマンと灯りの関係

鈴木圭介

中学、高校の同級生とフラワーカンパニーズというバンドを結成して、今年で31年目になる。メンバーチェンジなし、活動休止なし、ヒット曲なしをモットー、いや、これはただの結果。とりあえず、走り続けてきた。いや、歩いていた時の方が多いかも。メンバー全員今年で51歳。年がら年中ライブ三昧で、公演数は一年に80本前後。今はコロナの影響でライブ活動をストップしているが、3ヶ月前まで、週末はほぼどこかでライブをやっていた。日本全国、北海道から沖縄まで。移動手段は機材車、トヨタのハイエースというワンボックスカー。今の車は歴代8代目でかれこれ10年以上の付き合いになる。走行距離は50万キロを突破していて、これは地球10周分以上の距離になるらしい。今の車で50万キロ超えなので、それまでの機材車の走行距離も合わせると地球20周以上しているんじゃないだろうか?海外公演はおろか、僕個人に至っては海外旅行も一回(しかも仕事で)しか行ったことがないのに。俯瞰で見ると、同じところを何回も何回もぐるぐる回っているハムスターのようである。そう考えると実に世界は広いし、自分たちは小さい。

おそらく、こういうバンドは日本だけでも星の数ほどいる。そして、多少目的や事情は違うだろうがどのバンドも行動パターンは共通していると思う。それは光、灯りのあるところに進むということ。どのバンドもそれに向かって日々走る。バンドの成功を光と言いたいのではない。そもそも今の時代、バンドの成功とは何を指すのか?CDの売り上げやライブの動員数の多さだけを成功とする時代はもうとっくに終わったんじゃないかと個人的に思う。

灯りを求めて走るというのは、もっと単純で直接的なこと。一つはステージのスポットライト。スポットライトがなかったらお客さんだって何も見えない。たとえ昼間の野外フェスや町内会の催し物だったとしても、照明の一つや二つはある。まあ灯りがなくても絶対にやるけれど。

そして、もう一つは宿泊するホテルの灯りだ。車で次の街までの移動時間は長い時で16時間ぐらい。夜、地方の山合いの高速道路を走りながら、車窓から見える真暗な景色の中にポツポツと灯りが増えてくるのが見えると、長旅で疲れた心が少しずつほぐされて、癒されてくる。ホテルは大体街中にあり、ホテルの灯りを見るとホッとする。これでやっとベッドの上で手足を広げたり寝たりできると思うと、たまらない。

「灯りを求めてどこまでも」

なんて書きたいところだが、現実はそんなかっこいいもんじゃない。ただ灯りに吸い寄せられている蛾のような存在。それがバンドマンの実態のような気がする。蝶だったらもう少し絵になるが、夜、光に集まる虫は大概、蛾か蚊だ。

蛾や蚊は英語にすると、モス、モスキート。バタフライだったら曲名になるけど、モスキートは難しそうだ。殺虫剤でプシュッとやられてお終いだもんなぁ……。

だが、殺虫剤でやられてもやすやすとくたばらないのがツアーの多いバンドマン。バンドマンは養殖や天然記念物のように大事にされなくてもしぶとく生き続ける。むしろ害虫のように扱われている方が長く生きるのだ。

「そこに灯りがある限り!」

あって欲しい、灯り。どんなに小さくてもいいから。

Vol.76 鈴木圭介

PROFILE

鈴木圭介

ロックバンド、フラワーカンパニーズのボーカル。1989年、地元名古屋でフラワーカンパニーズを結成。全国を機材車で駆け巡り、怒涛のライブを展開。楽曲「深夜高速」が多数のミュージシャンにカヴァーされるなど、その活動が注目され話題に。2015年自身初の日本武道館公演を開催、大成功を収め、2019年4月「メンバーチェンジ&活動休止一切なし」で結成30周年を迎える。今年5月、自身2作目となるエッセイ本『深夜ポンコツ』を刊行。

COMMENT

「窓の灯り」というテーマを受け、エッセイに込めた思い
僕らのような、ツアーの日々を送るバンドマン達にとって、街の灯り(すなわち窓の灯りでもある)が、いかに大切な物であるかということが少しでも伝わったら嬉しいです。
このエッセイを読まれた方へ
今、全国のバンドマンは、ツアーが出来ない日々を過ごしていますが、再開出来る日が来たら、ぜひ皆さんも色んなライブを体験してみて欲しいです。
ご自身の眠れない、眠らない夜に欠かせないモノ・コトは?
眠れない夜は、一人でぼんやりと自問自答をしたり、本を読んだり、映画を観たりします。自問しても、答えは出ません。ただぼんやり考えるだけです。